【特集】米FCC報告書 (1) 報道の自由と民主主義の重大な転機

The Wall Street Newsでは、米連邦通信委員会(FCC)が6月9日に発表した、現在アメリカのジャーナリズム全般の現状を網羅した報告書「地域社会が必要とする情報」(英語、PDF書類)の概要を、今後12回に分けて紹介します。全部で計478ページと長いため、冒頭の概要だけでも23ページありますが、本文中の表やグラフにも触れながら、わかりやすくまとめてみました。

米FCC、478ページの報告書で米ジャーナリズムの現状に警鐘 (2011/6/10)

これはあくまでも概要の要約であり、全文訳ではありませんが、皆さんが日本のメディアの在り方を考える上で、何らかのヒントになればと考えています。

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情報革命によって、世界はどれだけ変わったのか?

2010年8月4日、カリフォルニア州で開かれた国際会議テコノミーで、グーグルのエリック・シュミットCEOは、「人類が2003年までに作り上げた情報量は、現在では2日間で作られる」と語った。2003年当時、まだこの世に存在していなかったフェイスブックは、今やアメリカの他メディア全てを合わせてもかなわない利用者数を誇る。

1851年、ロイター通信社を起こしたポール・ユリウス・ロイターは、それまで列車を使うよりも早い伝書鳩で伝えていたロンドン=パリ間の株式市場の情報を、電報を使った通信に切り替えた。同社はその後160年間の歴史の中で、海底ケーブルから衛星利用まで、常に革新的な通信手段を模索し続けてきた。現在のトムソン・ロイターが発信する情報量は、160年前の伝書鳩に256ギガバイトのフラッシュメモリをくくりつける計算になるという。実に800万倍にも膨れ上がったのである。

今日のデジタル革命は、情報がどのように作られ、配信、共有、表示されるかを一変させたが、私たちはこうした変化の意味づけをようやく理解し始めたばかりだ。ドイツ生まれのポール・ユリウス・ロイターがロンドンで生業とし、アメリカ建国の父たちがアメリカ民主主義の根本理念とした「ジャーナリズム」の意味とは、何なのか。

健全な民主主義のためのメディア

第3代アメリカ大統領で、アメリカ合衆国建国の父の一人とされているトーマス・ジェファソンは、当時いくつかの新聞を毛嫌いしていたものの、「報道の自由(free press)」の重要性を痛感していた。1787年、当時バージニア邦議会議員へ宛てた手紙の中で、「新聞不在の政府と、政府不在の新聞のどちらかを選べと言われれば、迷わず後者を選ぶ」、と宣言している。現在の言葉に置き換えれば、「新聞」とはいわゆるメディアの機能のことだ。

市民が幸せを追求し、説明責任のある政府や権力機関を得るには、必要な情報を提供すべきだという考え方だったのだ。

このように、「情報を得た市民(informed citizen)」と「健全な民主主義(healthy democracy)」のきわめて重大な繋がりがあるからこそ、数年前から始まったデジタル革命に対し、アメリカでは一部国民とメディアの間で、危機感が募っていった。新聞社、雑誌社、テレビ局でジャーナリストの大量解雇が始まり、従来のメディアのビジネスモデルが崩れ始めたからだ。

アメリカでジャーナリズムを支援する非営利の私的財団John S. and James L. Knight Foundationは2008年と2009年、この状況をつぶさに調査し、以下のような結論に至っている。

「アメリカは、コミュニケーションの歴史上、重大な転機を迎えている。情報技術(IT)は、未来を簡単に予測できないほど私たちの生活を変えている」

「デジタル時代により、情報とコミュニケーションのルネサンス(復興)が始まったが、全てのアメリカ市民・地域社会にとって公平とは言えず、民主主義に十分貢献していない。こうした民主主義の不足に対し、個人や団体がこれからどのように対応していくかが、私たちの今後の生活の質と地域社会の根源に
関わっていく」

メディアの現状について議論しよう

こうした状況を踏まえ、FCCでは以下の2点を探るため、FCC関係者のみならずジャーナリスト、ビジネスマン、学者、政府関係者ら総勢70人以上の協力のもと、既存の報道機関とインターネットの普及による市民の情報収集の現場を調査した。

    1) 市民および地域社会が知りたい、もしくは必要なニュース、情報、報道を得ているか?
    2) 現行の公共政策は、イノベーション(=技術革新)を奨励し、地域社会の利益目標を促進するために、最新のメディア市場の本質に沿ったものであるか?

同報告書作成の目的は、公共の場での幅広い議論を進め、FCCの現行規定を査定するためである。政府機関であるFCCが、政府を監視するメディアに関してこのような報告書を作成すること自体への批判は重々承知している。しかし、移り変わりの激しい現代の情報社会において、現状を把握する調査を行わないことのほうが公共政策の不正行為であるという観点から、調査に踏み切った。

よって、同報告書でFCCが問題を指摘するからと言って、それがFCCの責任であったり問題解決の権限を持つわけではないことを、改めて強調したい。FCCでは、ジャーナリズムの現状について、政府の持つ役割はあくまでも補佐的なものであると考える。

「アメリカ合衆国憲法の父」、第4代大統領ジェームス・マディソンは1800年12月24日、憲法修正第1条に関する書簡の中で報道の自由に触れ、「報道の中に一部の乱用(悪用)があったとしても、それらを取り除くことで健全な報道の活力をそぐことは好ましくない」と指摘している。これは、FCCも賛同する概念だ。

健全なメディア市場がなければ、地域社会は深刻な損失を被る。

FCCでは市民、企業家、非営利団体、経済界が協力して互いの溝を埋めあい、メディア革命の恩恵を受けていくことで、この国が史上最高のメディアシステムを育むことができると期待している。

【特集】米FCC報告書 (2) それは報道の主役「新聞」から始まった
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(訳・文/福山万里子)

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