【特集】米FCC報告書 (3) 記者数減少で汚職スキャンダル増加

【特集】米FCC報告書 (1) 報道の自由と民主主義の重大な転機
【特集】米FCC報告書 (2) それは報道の主役「新聞」から始まった

米FCC、478ページの報告書で米ジャーナリズムの現状に警鐘 (2011/6/10)

米連邦通信委員会(FCC)のオリジナル報告書「地域社会が必要とする情報」はこちら(英語、PDF書類)

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教育・裁判の専門記者の数がゼロに

約200年の歴史を誇るアメリカの新聞は、その昔ラジオ・テレビの台頭があっても生きのびてきた。しかし、その多くが広告収益を得やすい全米チェーン化を推し進めた結果、1990年代までにはすっかり「利潤追求型の企業」になっていた。「株主に対する責任」、「収益のための戦略」という言葉が、編集デスクたちに突きつけられるようになっていく。

そして、インターネットの登場。

新聞の深刻な収益減少は、2005年時点で顕著となった。2000年時点で487億ドル(約3兆9千億円)だった広告費は、10年後228億ドル(約1兆8千億円)にまで半減する。

各地で記者たちの大量解雇が加速していった。

1837年創刊のボルティモア・サン紙(メリーランド州)が2009年に掲載した記事の数は、1999年に比べ32%、1991年と比べると73%も減少。(ピューリサーチセンター調べ)

ピュリツァー賞を過去に3回受賞しているラレー・ニュース&オブザーバー紙(ノースカロライナ州)では、2004年時点で250人いた従業員が、2011年2月には103人にまで減少。地元の裁判や学校教育、農業、環境などを専門に記事を書いてきて記者の数は、ゼロになった。

各州の州政府を担当する記者の数も劇的に減少している。ニュージャージー州では、2003年の35人から2008年には15人に減少。カリフォルニア州では40人(2003年)から29人(2008年)に、ジョージア州では14人(2003年)から5人(2008年)にまで減ってしまった。

調査報道に携わる記者数推移の定かなデータはないが、ピュリツァー賞の「公共事業部門」に提出される記事の数は、1984年に比べ2010年には43%減少したという報告もある。

また、全米半数以上の27州で、地元新聞が首都ワシントンへ常駐特派員を派遣しておらず、1980年代半ばに比べて首都のニュースを報じる新聞は半減したという。

汚職が増え、当局の権力増大に

2010年6月、ロサンゼルス郊外にある労働者階級の多いベル市(カリフォルニア州)で、同市の首席行政官や警察署長の年収が4000~8000万円相当にも上ることが発覚。スクープを掲載したロサンゼルスタイムズ紙は、ピュリツァー賞を受賞した。ところが、その後の調べでこのスキャンダルは、2005年にまで遡っていたことが判明。実に4億5000万円相当の税金が、同市職員の懐に入っていたことがわかった。

同じく2010年4月、ウエストバージニア州で29人の死者を出した炭鉱事故では、事故後の調査で、同炭鉱が5年前から1300件以上の違反行為を繰り返していたことが判明した。

すでに起きてしまった事件は報道するが、地道に細かなデータを分析し、最終的に汚職スキャンダルを暴くというスタイルの取材がいかに減っているかがわかるだろう。

アメリカ国民のジャーナリストに対する評価は以前から低いが、記者たちの力が弱まるにつれ、当局がその威力を増すこともわかっている。

ピューリサーチセンターが今年1月に公表した調査結果によると、記者の数が減ったことで政府当局発表の記事の数が増えており、例えば前述のボルティモアで報じられたニュースの6割以上が、政府当局主導で発せられたものだった(マスコミ主導は15%)。

裁判の取材が減ったことで、裁判所の力が強くなり、これまで記者たちの要求に応じて公開してきた裁判資料の入手が、年々難しくなっているとの報告もある。

器用な記者が増えたが取材の中身は?

スタッフの数を減らした新聞社では、残った記者たちが効率よく仕事をしている。アメリカの地方では、ローカルニュースをネットで読むなら、地元新聞のウェブサイトへ行くのが一番。稀少な存在となった今どきのフルタイムの記者たちは、Twitterやブログを更新し、小型ビデオカメラを自在に操るなど、よりハイテクになっている。

ところが、一人でこなす作業が増えたため、肝心の聞き込み取材や詳細な調べものをする時間はほとんどない。まるで1930年代の通信記者のような仕事に終始しているのが現状だ。

コロンビア・ジャーナリズム・レビューのディーン・スタークマンは、2010年9・10月号の記事で、こうした器用な記者たちの働きを、「ハムスターの回し車」現象と呼んでいる。

毎日、一定数の記事を書くために一生懸命働いている記者たちだが、目の前の風景は即座に描写できても、岩を一枚一枚はがして丹念に調べる時間がない。これでは、都合の悪いことを隠そうとする権力機関の闇を暴くことは無理だろう。

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次回(4)は、テレビ報道の現状です。

(訳・文/福山万里子)

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