【特集】米FCC報告書 (4) テレビニュースの内容が薄くなった理由

The Wall Street Newsでは、米連邦通信委員会(FCC)が6月9日に発表した米国ジャーナリズムの現状に関する報告書の概要を、全12回に分けた【特集】として紹介しています。

今回は、全米にあるローカルテレビ局の報道取材について、現状と問題点を見ていきます。

これまでの特集。
【特集】米FCC報告書 (1) 報道の自由と民主主義の重大な転機
【特集】米FCC報告書 (2) それは報道の主役「新聞」から始まった
【特集】米FCC報告書 (3) 記者数減少で汚職スキャンダル増加

米FCC、478ページの報告書で米ジャーナリズムの現状に警鐘 (2011/6/10)

米連邦通信委員会(FCC)のオリジナル報告書「地域社会が必要とする情報」はこちら(英語、PDF書類)

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地域のニュース報道に欠かせない存在

ほとんどのアメリカ人は、地元のニュース情報をローカルテレビ局から得ている。地域密着型の情報を提供するために、ローカルテレビ局の果たす役割は大きい。5年前に比べ収益は必ずしも十分とは言えないが、地域住民が必要とする情報を様々なプラットフォームで提供するその努力は、目を見張るものがある。

地元ニュースの提供というビジネスモデルにおいて、最も成功しているのがローカルニュース局だと言えるだろう。

全米のローカルテレビ局は、7年前に比べニュースの放送時間を平均35%増やした。デジタル放送チャンネルを増設し、人気の高いホームページ、スマートフォンのアプリなど、アクセスの選択肢も抜群に増えている。一般市民撮影の携帯カメラ映像や、Twitter(ツイッター)によるリポートなど、新しい技術を積極的に利用しているのも特徴だ。地域に役立つ情報を幅広い視聴者層に無償で提供するという、本来の目的にかなった真摯な情熱が感じられる。

ニュース時間は増えたが、内容は薄く

今や地元ニュースの提供において、ローカルテレビ局は最も重要である。ところが、残念なことに、衰退著しい新聞がこれまで担ってきた役割を埋めるにはいたっていない。

理由は、ニュース時間の増加に反比例して、ローカルテレビ局でも人員削減をしているからである。スタッフの数が減れば、それだけ深みのある取材はできなくなる。

テネシー州ナッシュビルの地元局WKRNのマシュー・ゼルキンド報道ディレクターは、「予算を確保できない長期的なロケ取材は、死滅状態にあります。とにかく全てがカネ、カネ、カネなんです」と語る。ABC系列のテレビ局を傘下に持つハースト・ブロードキャスティングのフレッド・ヤング元副社長は言う。

「経営側にとっては、毎日リポーターが必ず1本は取材・放送してくれる方が、(日数をかけてロケをする)調査報道取材より、はるかに採算があると考えるのです。」

最も取材されないトピックは、教育、医療、地元政府についてだ。ロサンゼルスのテレビ報道に関する2010年の調査では、上記3つのトピックは、30分間の放送中平均1分弱しか取り上げられないという結果が出た。地元自治体の財政危機に関するニュースは、100本中1本の割合でしか放送されていないという。2009年に行われた他の調査でも、全米175の都市で放送される地元ニュースの内、自治体政府に関するニュースは、犯罪ニュースの3分の1しかないと報告されている。

器用になったリポーターの功罪

ほとんどの地元局では、インタビュー、撮影、編集すべてをリポーター1人でこなす。局側からしてみれば、それだけ多くのリポーターを違う現場に派遣することができ、効率は良いと言えるだろう。しかし、現場の実情はそんなに甘くない。

ユタ州ソルトレークシティーKSL局の元報道ディレクター、コン・サラスさんは、「結局のところ、経費削減にしか役立ってない。人数を減らせばそれだけ画質も劣るし、取材内容も劣化する。ウェブサイトに載せたからと言って質が上がるわけではない」と、言いきる。

「現場でツイートしながら撮影、編集すれば、それだけインタビューする時間が減ります。1~2人インタビューしただけで、『番組用にはもう十分だろう』と取材をやめてしまう。これじゃ取材リサーチとは言えません。」

広告主との不適切な関係

最も不安なことは、広告主に放送するニュース内容への口出しを認めるローカルテレビ局があることだろう。ウィスコンシン州では、ある病院に週2回の放送内容を自由に提案させ、見返りにこの病院から広告料を貰っていたことで、報道ディレクターが辞任するというスキャンダルがあった。オハイオ州でも、「医療の進展」というコーナーで病院側に有利なネタを提供してもらい10万ドルを受け取っていたケースがある。

いかにも取材班が撮影したように見せかけて、実は複数の企業のプレスリリースをそのままニュースとして放送するなど、悪質な事例は後を絶たない。ピューリサーチセンターでジャーナリズム調査部門を担当するトム・ローゼンステイル氏も、「こうした傾向は、5年前に比べて広がっている」と警告を発している。

取材能力を高めたローカルテレビ局がある一方で、現状のままでは、新聞の衰退で失われたメディアの役割を、テレビが補っているとは言い難い。全米テレビ局の報道部門幹部を対象に2010年に行われたアンケート調査では、実に64%が「(職業倫理的に)悪い方向に向かっている」と自覚している。これは、新聞社よりも悲観的な数字だ。

FCCとしては、これはあくまでもテレビの「現在の」問題であることに留意したい。なぜなら、日々移り変わるメディア環境の中で、ローカルテレビ局の報道部門がジャーナリズム上、今より大きな役割を担える可能性は十分あるからだ。

あとは、業界自身がその機会をうまく捉えられるかどうかにかかっている。

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次回(5)は、ラジオと衛星・ケーブル放送の現状と問題点をお伝えします。

(訳・文/福山万里子)

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