【特集】米FCC報告書 (5) 政府を「監視」できるケーブルテレビ

The Wall Street Newsでは、米連邦通信委員会(FCC)が6月9日に発表した米国ジャーナリズムの現状に関する報告書の概要を、全12回に分けた【特集】として紹介しています。

第5回では、全米にあるラジオ、ケーブル、衛星テレビ局の報道取材について、現状と問題点を見ていきます。

これまでの特集。
【特集】米FCC報告書 (1) 報道の自由と民主主義の重大な転機
【特集】米FCC報告書 (2) それは報道の主役「新聞」から始まった
【特集】米FCC報告書 (3) 記者数減少で汚職スキャンダル増加
【特集】米FCC報告書 (4) テレビニュースの内容が薄くなった理由

米FCC、478ページの報告書で米ジャーナリズムの現状に警鐘 (2011/6/10)

米連邦通信委員会(FCC)のオリジナル報告書「地域社会が必要とする情報」はこちら(英語、PDF書類)

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地域に密着できていないラジオ

全米各都市の民間ラジオ局は、ほとんどが地元ニュースの報道をしていない。ニュースやトーク形式の番組は定着しているのに、全米シンジケートの有名番組ばかりで、地元で制作されるものが極端に少ない。ラジオで流れるニュースや公共アナウンスの86%が、全米シンジケートで制作されたものという調査結果もある。

民間のニュース専門ラジオ局の数は、1980年代の50から、現在は30にまで減少している。そのうち、実際にこれらのラジオ局からの電波が届く家庭は、地域人口の30~40%にすぎない。

オバマ大統領は今年1月、コミュニティー放送用の低出力FM局を認可する法案に署名した。出力100ワット(電波が届くのは約20キロ圏内)のFM放送局は、全米ですでに800以上展開している。今後これらのラジオ局が、地域社会にどのように貢献していくか注目していきたい。

政府を監視するSPAN放送

ケーブルテレビ局は、広告料と受信料という2つの財源を確保し、広告だけに頼る地上波局に比べ、経営的には成功している。全米ネットワークのケーブルニュース局が成長したことで、地上波局で衰退している報道取材をまかなっている、とも言える。

しかし、前述のラジオ同様、ケーブル局もそのほとんどは全国ネットワーク用に制作された番組に頼り、地元ニュースの取材には活用されていない。ニューヨーク市の地元ニュース専門局「NY1(ニューヨークワン)」を擁するタイムワーナー、カバーエリアのロングアイランドやコネチカット、ニュージャージー各州の地元ニュース専門局「News 12(ニュース・トゥエルブ)」を持つケーブルビジョンなど、ごく一部のケーブル局しかローカルニュースの専門局を置いていない。

現在、全米でローカルニュースをケーブル局で視聴できる人たちは、全体の25~30%だけである。

一方で、議会中継などを行う非営利チャンネルC-SPANを模した、SPAN(state public affairs networks=州パブリックアフェアーズネットワーク)と呼ばれるケーブルチャンネルの今後に期待したい。(※C-SPANは、Cable-Satellite Public Affairs Networkの略。)州議会の中継や政府の活動を放送することで、政府や公務員に「監視されている」という概念を植え付け、有権者に対する説明義務・責任の強化に役立つからである。

問題は、現在27州でこうしたSPANが存在せず、C-SPAN同様にチャンネルとして提供しているのは、わずか4州しかないことである。

また、ケーブル放送の発足当初から、PEG(public, educational, and governmental access=公共、教育、政府アクセス)チャンネルという、市民による表現の場が設けられてきたが、現在インターネットの台頭により、その存在意義が問われている。中には、デジタルリテラシースキルを教えたり、市民ジャーナリズムの場として生まれ変わろうという努力も見受けられる。しかし、昨今の地方自治体の大幅予算カットの対象になる場合が多く、今後の存在は危ぶまれる。

手数料がネックの衛星放送

衛星放送の技術は、特にローカル編成に寄与しているとは言えないものの、FCCでは全体の4%のチャンネルを教育用に充てることを規定している。現在、多くの衛星放送プロバイダーでは、宗教、公共アナウンス、外国語放送などが、教育用チャンネルとしてあてがわれている。

現状の問題点は、衛星放送に乗せるためには多額の手数料がかかるため、非営利で教育番組を制作するチャンネルにとっては負担が大きく、なかなか取り上げてもらえないことである。

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次回(第6回)は、「インターネットと携帯電話の台頭」です。

(訳・文/福山万里子)

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