「変われない日本」 海外メディアに広がる懸念

「巨大地震は日本史上最大のターニングポイントになるだろう」

「日本は震災をきっかけに改革を進めるに違いない」

東日本大震災発生直後の3月、繰り返し流される被災地の悲惨なニュースと同時に、海外メディアはエールも込めて「日本のチェンジ」を期待していた。それまで日本と言えば、高齢化社会、長引くデフレ不況、巨額の債務問題が、半ば代名詞のようになってしまっていたからだ。

ところが今月に入り、海外からのそうした期待や希望は徐々に崩れ始めている。松本龍・前復興担当相辞任騒動が拍車をかけたという感じもあるが、この1週間(7月2日~8日)だけで、目についた記事を紹介したい。

「ウォークマンや世界一信頼できる自動車を作りだした起業家精神はどこへ?」

最も痛烈な批判は、米ブルームバーグの在東京コラムニスト、ウィリアム・ペセック氏による7日付のコラム「ネットで拡散した動画が日本経済の全てを語る(Viral Video Says It All About Japan’s Economy)」だった。

「今の日本で2番目に重要なポスト」(ペセック氏)である復興対策・防災担当相就任から1週間後の今月3日、宮城県庁を訪れた松本氏が、村井嘉浩知事を報道陣の前で叱責した様子は、「YouTubeで急速に広まり、同氏は辞任に追い込まれた」と説明。

「この出来事こそ、日本の政治システムがいかに間違っており、経済見通しが日に日に暗くなっているかを象徴している」という。

「被災地の状況掌握を自治体任せにし、東京で政治闘争に明け暮れる政府」のおかげで、「東京での議論は、(震災前と)全く変わらない」

ペセック氏によると、日本が変われない理由は2つ。「首相交代を望んで自滅に走る政治家やマスコミ」と、「アメリカの軍需産業に匹敵する日本の原子力産業の影響力」があるからだという。

「菅首相の前任者4人が1年前後でくるくると政権交代」し、「そのうち3人は原発を推進してきた自民党政権」であること。「日本の従順なマスコミは、開けても暮れても『菅降ろし』しか報道しない」ことを挙げている。

「震災直後には変化を期待していた」というペセック氏だが、「今は深く疑いを持っている」という。

同氏は最後に、「東電は破産させるべきであり、松本氏のような政治家を重要ポストに就けるべきではない。海外の投資家が当面できることは、日本政府の危機感のなさに頭をかいて当惑するだけ」と言い放っている。

「国のリーダーシップと方向性が全くない」

一方英BBCニュースは7日、2000~2004年に東京特派員を務めたチャールズ・スキャンロン氏による、「日本:危機対応にもがく役立たずのリーダーたち(Japan: Lame-duck leaders struggle with crisis response)」という、タイトルからしてかなり批判的な記事を出した。

スキャンロン氏は、「日本企業の多くは、震災被害を受けたサプライチェーンを迅速かつ効率的に回復させた」と、民間の力を褒め称えている。しかし、「震災から4カ月も経つのに、レームダック(政権末期の役立たずな状態)の現政権がお荷物になって、被災地への適切な対応ができていない」、「原発危機についても十分把握していない」、と指摘する。

「19世紀には、アジアでほとんど唯一西欧の帝国主義をダイナミックに押し返し、第二次世界大戦後の目覚ましい経済復興で、誇るべき技術と底力を見せつけた」にもかかわらず、「(今の日本には)そのようなリーダーシップや明白な方向性が全くない」という。

松本前復興相辞任前からの菅政権内のごたごたや、野党との争いを説明したうえで、ケンブリッジ大東アジア安全保障専門のジョン・スウェンソン・ライト博士にインタビューし、「あまりにも気が滅入る話だが、今の日本の政治は安定して一貫したリーダーシップを選べなくなってしまっている」というコメントを紹介。

「1989年のバブル崩壊後、国力がゆっくりと低下する中、日本は政治的無気力(=麻痺)状態に陥った」(スキャンロン氏)

「国民の間に広がる皮肉は、今回の危機の大きさで人々を内向きにした。これでは中央の政治からますます遠ざかってしまう」(スウェンソン・ライト博士)

「末期的ともいえる政治と経済の低下ムードは、きわめてショッキングだ」(スウェンソン・ライト博士)

「3月の震災で、多くの人が日本の政治が無気力状態から脱することを望んでいた」にもかかわらず、「国民がリーダーシップを切望しているこの時期に、つまらない口論と内紛へと堕落してしまっている」と結んでいる。

「融通の利かない官僚主義にしびれを切らす被災者たち」

「失速する日本の津波復興(Japan’s tsunami recovery stalls)」という長文記事を出したのは、 7日付の米クリスチャンサイエンスモニター紙。宮城県の被災地を訪れたピーター・フォード記者が、丁寧に現地の声を拾っている。

漁業の町として知られる石巻漁港では、水産加工品を製造・販売するさんりくフーズで、いまだに水や電気が復旧していない現状を報告。社長だった父親を津波で失い、家業を継いだ高松ヒサシさんに話を聞き、「全損した機械類は一部しか保険でカバーされておらず、低金利ローンの話も工場を再開できるほど手が届くものではない」との声を紹介している。

石巻市近辺では、「体育館で今なお多くの人が避難生活を強いられている」、「国が約束した仮設住宅は半数しか完成していない」、などといった状況も取材している。

仙台市では、地震で建物が損壊した知的障害者のデイケアセンターつどいの家を訪れた。「市に修理の要請を出していますが、『中央政府の復興プランを待っている』と言われるだけで、全く進展はありません」(下郡山和子施設長)という。

石巻漁港をさらに北上した大指(おおざし)漁港では、津波で船を失くしたという海藻業者のアベ・ヒロシさんに取材。「政府が4月に漁船などの復旧対策予算を計上したが、地元政府に問い合わせても、『中央政府からの指示がないと受け付けはできない』と言われ、2カ月も待たされた」という話を聞き出している。

3月から地元の公民館で避難生活を送ってきたアベさんは、近々地元有志とボランティアの力で建てた仮設住宅へ引っ越すと言う。「自治体はいつまでも遅々として動かない」からだという。

他にも、仙台市で自力で豆腐店を再開させた店主の話を紹介し、遅すぎる政府の対応にしびれを切らす被災者たちの姿を伝えている。

「取り残された高齢化被災地」

被災地の復旧・復興が滞っていることは、医学誌「ランセット」でも伝えられている。7月2日号に掲載された「日本の遅いリカバリー(Japan’s slow recovery)」では、医療過疎の町岩手県山田町で、先月末に閉鎖された県立山田病院が紹介されている。

同病院の平泉宣(ひらいずみ・せん)副院長から、震災当日からこれまでの苦労話を聞く一方、取材当時震災から3カ月以上経っても病院建物の1階部分は機能せず、2階の手術室も暗いままで、入院患者のいた部屋で細々と外来患者を受け付けていた様子を伝えている。

山田病院は、人口約2万人の山田町で唯一の総合病院だった。3月11日の津波では、山田町だけで400人以上が亡くなり、現在も3600人近くが避難生活をしている。住民の多くが60歳以上の高齢者だ。同誌では今回の東日本大震災の特徴として、「以前から高齢化医療に悩んでいた地域が多いところへ、医療施設が被災しカルテが流されたなど、問題が一層深刻化している」と報告している。

閉鎖された山田病院は、今のところ再建のめどはなく、「国や地方政府からの補助金は全く出ていない」(平泉医師)という。

同誌ではこうした高齢化被災地の現状以外に、未だに9~10万人が避難生活を強いられていることや、国が8月までに約束している仮設住宅が、6月半ばの段階で半数しか建設されていないことを例に挙げ、長引く避難生活のストレスがたまる現状を指摘。PTSD(心的外傷後ストレス障害)や自殺者の増加についても触れている。

(福山万里子)

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