【特集】「MoMAでパワーアップ」 スプツニ子!さんインタビュー(1)

MoMAの企画展「Talk to Me」出展のためニューヨークを
訪れたスプツニ子!さん (Image: © 田代由卯花)

YouTubeなどのソーシャルメディアを中心に活躍するアーティスト、スプツニ子!さん(26)。今月24日から、ニューヨーク近代美術館(MoMA)の企画展「Talk to Me」に作品を出展している(2011年11月7日まで開催中)。

ロンドン大学インペリアルカレッジ数学部/情報工学部を卒業し、ロンドン在住時代はプログラマーとしても活躍していたという、理数系アーティスト。昨年、名門ロイヤル・カレッジ・オブ・アート大学院を卒業する際に制作した、『生理マシーン タカシの場合。』で注目を浴びた。

作品ごとに科学的なリサーチを入念に行い、自作のストーリーに沿ったポップな画像、楽曲、ミュージックビデオに昇華させるという独特のスタイルで、インターネットで多くのファンを集めている。

MoMAのオープニング前、展示作品のチェックのために東京からニューヨークを訪れていたスプツニ子!さんに、作品のこと、日本と欧米のアートの環境の違い、意外な人脈などについて、じっくりインタビューした。

***

きっかけはインターネット

今回のMoMAは、「展示しませんか?」って、会ったことないキュレーターから突然メールを受け取りました。(先月選ばれた)米国最大の広告業界専門誌「Advertising Age」での「今年のクリエーター50人」の選考も同様です。私は、作品が全部YouTubeとかウェブにあるので、結構インターネットを見て知って招いて頂く場合が多いんです。ちょうど去年の夏に大学院を卒業したんですが、そのときにワイアード(WIRED)とかギズモード(Gizmodo)などのブログが取り上げてくれて、アメリカの人にも知ってもらいました。

(2010年の)東京都現代美術館の展示も、向こうからインターネットで探してくれて。今は一生懸命、実際に人に会っています。今回ニューヨークへ来る前に招待されていた、リトル東京デザインウィークでは、ロサンゼルス現代美術館(MOCA)のジェフリー・ダイッチ館長にもお会いしました。

インターネットが普及していなかったら、多分絶対こんなに早く美術館で展示してなかったと思うし、色んなことが違ったと思います。こんなにファンもつかなかっただろうし。私みたいにヘンなことやってるのは、絶対にメジャーな人たちは好きじゃないから。10年前だったら出てこないようなことが、ちゃんと人の目に触れるようになって、いいことだと思います。

MoMAで新作ビデオ公開

今回MoMAに展示しているのは、『カラスボット☆ジェニー』と、『生理マシーン タカシの場合。』の2作品です。『カラスボット☆ジェニー』というのは、元々ダナ・ハラウェイというサイボーグ・フェミニズムの哲学者が好きで、彼女が2008年に出した、人間と動物の関係についての著書『When Species Meet』 (University of Minnesota Press, 2008) に触発されて、動物とコミュニケーションを取りたいと思ったんです。

ケンブリッジ大動物学部へ行って先生にお願いし、色々な動物とのコミュニケーションについて教えてもらいました。カラスの「こんにちは」、「ここは危ない」などという言葉の音声をもらって、カラスボットに入れてロンドンでテストしたら、実際に会話ができてしまったんです。

なぜカラスかって、それはカラスが一番頭がいいからです。言葉も一番複雑です。あとは、特にイギリスでは動物愛護法が厳しいんですが、イルカやコウモリなどの他の動物よりは、カラスだと比較的コミュニケーションする作品の対象にしやすい、と研究者の方々にアドバイスされたのも理由の一つです。

今回の『カラスボット☆ジェニー』のミュージックビデオは新作で、まだインターネットには出ていないものをMoMAで公開しています。すごくいいですよ。超パワーアップしてるから。『生理マシーン』×10くらいで。(笑) パワーアップしないと新しいモノ作りたくないし。いい感じです。

『生理マシーン』のほうは、ずっと女の人の生理に興味があったんです。毎月起きるもので、痛いし、体調も悪くなるのに、なぜかあまり解決されてない問題だな、と。そこで色々調べてみたところ、実は1960年に避妊用ピルが米食品医薬品局(FDA)に認可された時点で、すでに飲み続けると生理をなくす方法を科学者たちは知っていたそうなんです。ところが、ピルを開発したジョン・ロックさんは、当時生理をなくしてしまうと、社会的・宗教的に反発が起きてしまうと思って、わざと3週間飲んで1週間休むというデザインにしたそうなんですね。

それが50年前の話です。でも50年経って、宇宙旅行やインターネットといった色んなテクノロジーが発展したにもかかわらず、生理の問題はまだ解決されていない。解決することはできたのに!今やっと、アメリカなどでアニヤ(Anya、もしくはLybrel)というピルが販売され始めていて、完全に生理を止めてしまえるし、副作用もほとんどないとされています。ただし、実際はホルモンの関係で人それぞれだそうですが。

とにかく、ピルや生理にまつわる議論がすごく面白くて、ロンドン大学産婦人科の先生に、月経について色々話を伺いました。私の作品では、「テクノロジーで生理をなくす」の逆の皮肉で、男性がテクノロジーで自分に生理をつけちゃう、みたいなストーリーで作ってます。音楽も、ストーリーも、ビデオも作りました。月経と女性とテクノロジーについて、私のこうした作品を窓口にして、情報を知ってもらえたらいいな、と思っています。

欧米で話題に

『生理マシーン』は制作中から、「これは面白いな」、「話題になるな」、と思っていたんですけど、それは単に「今度の卒業生でこんな子がいるよ」程度だと思ってましたから、ヨーロッパでの反響は予想以上でした。イギリスだけじゃなく、スウェーデンやアルゼンチンの大衆紙にも取り上げられたし。思った以上に爆発的な反応でしたね。私自身はそこまでビザール(=奇異な)だと思ってなかったので、「そんなにビックリすることなんだ」、と。生理を扱った芸術は今までもあるんですよ。ただ、私はドロドロした生理の扱いではなくて、サッパリ、カラッと科学的にアプローチしたかった。

ギズモードとかに出た時に、ギーク系の男性から拒否反応がありましたね。「睾丸を蹴られるより痛くないだろう」、「バカバカしい。どうして生理を経験してみたいんだ」、という幼稚なコメントもありました。それに対して、女性読者からのコメントで、「いや、これは本当はもっとすごいこと」という、ディスカッションや応酬があって、面白かったです。他に、私が男装していたんで、私が「男か女か」という論争もされてて、日本とは結構反応は違いました。

作品より作家を語る日本

日本人は、アニメや漫画でちょっと不思議なシチュエーションの物語に慣れてるせいかもしれないんですけど、生理マシーンをつける男の話よりも、作品を作ったスプツニ子!の話題に終始してましたね。日本人がアートに関するディスカッションをする場合、対象は私な場合が多いんです。「スプツニ子!が・・・」、「スプツニ子!とは・・・」って、作家について語る。欧米は、私自身よりも作品について語る傾向にあるので、違いはハッキリ分かれましたね。

日本人って、割と作品より作家に注目しますよね。作家ありきで、「この作家が作ったから、良いに違いない」みたいな風潮もある。作家は一度名を成すと楽だけど、「なんか本当に作品を評価されてもらってるのかどうかわかんない」、っていうのが日本の状態で。私も、作品のことをもっと話してほしかったけど、「スプツニ子!って誰だ?」みたいな話が多かったですね。

日本を拠点にしている理由

私の作品の中でポップカルチャーはすごく重要なんです。だから(イギリスの学校を卒業後)日本を拠点にしようと思いました。わざと難しいことを簡単にして、ポップミュージックにしてYouTubeに載せるという、ポップカルチャーのフォーマットに、こんなヘンなものを載せることができるのって、逆に日本しかないんじゃないかと思って。日本であえて、アートをポップカルチャーのフォーマットとかましてやったほうが、アーティストとしての自分と、私の作品にとって良いことだと思ったんです。

日本は、やっぱり自分の作風に合ってるんだと思います。もしイギリスにあのままいたら、できることの規模が全然小さかったと思うし。日本では、ちゃんとポップカルチャーと絡ませることで、やりたいことの規模がすごく大きくなって、新しいビデオもすごく完成度が高くなりました。『生理マシーン』を作った後、「この10倍、100倍やりたい」と思っていたことが、イギリスのアートシーンにいると、10年はかかっていたと思います。今すぐやりたかったから。

(2)へつづく。

(取材・文/福山万里子)

広告
カテゴリー: 特集記事 タグ: , , , , , , , , , パーマリンク

【特集】「MoMAでパワーアップ」 スプツニ子!さんインタビュー(1) への1件のフィードバック

  1. ピンバック: 【特集】「グーグル就職も考えた」 スプツニ子!さんインタビュー(2) | The Wall Street News

コメントを残す

以下に詳細を記入するか、アイコンをクリックしてログインしてください。

WordPress.com ロゴ

WordPress.com アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Twitter 画像

Twitter アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Facebook の写真

Facebook アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Google+ フォト

Google+ アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

%s と連携中