【特集】「グーグル就職も考えた」 スプツニ子!さんインタビュー(2)

MoMAの企画展「Talk to Me」出展のためニューヨークを
訪れたスプツニ子!さん (Image: © 田代由卯花)

今月24日から、ニューヨーク近代美術館(MoMA)の企画展「Talk to Me」(2011年11月7日まで開催中)に作品を出展しているアーティスト、スプツニ子!さんのインタビュー。(1)からのつづきです。

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ソーシャルメディアとの関係

学生時代から、ごく自然にツイッター(Twitter)を使ってました。学生の頃はお金もないから、自然とツイッターで増えたフォロワーに、「作品手伝ってください」って。『生理マシーン タカシの場合。』は、ツイッターで集めたスタッフで制作しました。20人ぐらい集まりました。しかも、当日初めて会った人ばっかり。カメラマン、ディレクター、ヘアメイク、スタイリスト、いろんな人が集まってくれたんです。だから、貧乏な学生でも、なんとか作ることができました。

ツイッターって、「やりたいことを言うと、人が集まって来るんだ」、という感じ。ツイッターで展覧会を開いたこともあります。今年2月に、表参道GYRE(ジャイル)っていう、シャネルとかが入ってるファッションビルの中に、ギャラリー(※)があるんですけど、そこで展示することになったんですね(※EYE OF GYRE、「Tweet Me Love, Sputniko!」展)。早速その展覧会自体を、私がキュレーションするんじゃなくて、ツイッターで集まったフォロワー(=ボランティアスタッフ)に、自由にキュレーションしてもらったんです。私の作品を渡して、「ここに好きなものを展示してください」、みたいな。

最後の日は、ギャラリー中にフォロワーが持ってきたオブジェがいっぱい置いてあって、私は何も作ってないし、何も見せてないんだけど、ただそこへ行って「きょう、面白いね」、みたいな。(笑) 「皆はこんなものを作って、こんなことを考えてるんだ」、みたいな。自分の展覧会だけど、何が起きるのかわかんない、みたいなところがあって、そういう実験をしたことがあります。

アマチュア文化について

かといって、あまりインターネットでこういうことをすることが、果たしてユートピア(=理想郷)なのかどうかというと、それはちょっと疑問です。だって、皆タダ働きだから、クリエーティブな人たちがどんどん苦しくなるんじゃないかと思う。「このままじゃいけない」、と思って、「私はちゃんとお金を回さないと」、という使命感を今は持ってやっています。

フリー(無料)カルチャーが浸透すると、アマチュア文化はできるけど、アートや音楽がアマチュアしかいなくなってしまうような状況が生まれちゃうんですよ。アマチュアだけになると、さすがにそれって文化にとって良いことなのかどうか、わからないところがあって。実際自分は、アマチュア文化から来てるし、アマチュア文化の象徴ともされて、ツイッターで人を集めて制作もしてるけど、それを皆に、「いいだろう。すごいだろう」みたいに、振りかざそうという気持ちはありません。何かしら未来の方法を考えて行かなくちゃ、と思ってます。そんな安易に、「ハッピー・アマチュア・カルチャー」じゃない。

イギリスの名門美大を出た理由

私、もともと学部が理系だったんですが、そこで音楽の授業を取ったのが、作曲を始めたきっかけです。イギリスの理系大学って、アメリカと違って一般教養がないんです。3年で卒業できるから、専門ばかりに偏らないように無理やり文系の科目を取らされるんですね。アートとか、音楽とか、歴史とか。音楽の授業は、イケメンの先生がいて(笑)、音楽好きだったから。

作曲は宿題だったから、せざるをえなかったんですけど、当時から音楽はすごい好きだったから、あんまり型にとらわれない音楽を作ることには慣れてたというか、最初の曲は49秒だったんです。下手だったから49秒しか書けなかったけど、「これでいいんだ」、「これはイケてる」と思って提出したら、割と評判が良くて。「ヘンだけど面白い」って、イケメンの先生に褒められて、「やった!」みたいな。(笑)

宿題で5曲書いたら、友だちにも結構気に入られて、ライブ始めたんですよ。当時まだハタチで、「ライブ楽しい」というか、「パーティーライフ」、「クラブライフ」の一環というか、タダでクラブ行けるし、友だちをゲストで呼べるし。当時はブリックレーン、ショーディッチとかクラブがいっぱいあるところに住んでて、クラブガールでした。(笑) 毎晩遊びに出かけて、随分楽しかったです。ロンドンは、ウェアハウスがあって、気軽に行けて、エントランスも安いし、すごいカジュアルな感じで遊んでました。

大学出たのが20歳で、結構早かったんで、2年くらいプログラマーしてたんですね。イギリスのプログラマーは日給が良いので、フリーで半年プログラミングで稼いで、あとの半年は自由に音楽をやる生活。ユースカルチャーにどっぷりはまってました。そんな生活が2年経って、「夢みたいに楽しいけど、このままじゃいけないな」、と。このままだとクラブシーン、アングラシーンから前に進めないと思ったから、自分が当時やっていた活動を進化させるために、ちゃんと勉強したくてロイヤル・カレッジ・オブ・アート(RCA)の大学院に入ったんです。

ちょうど私の大学の隣にあったし、「そういえばあそこは美大だ」、みたいな感じで。イギリスで一番名門の美大だし、なぜか当時の私はすごい自信家で、「トップじゃなかったら、美大に行く意味がない」、と思ってたから、RCAしか受けてないし、RCA受からなかったら美大は行かない、と思ってた。

RCAは、名門で伝統のある学校だけど、そこの先生たちは威張らないんです。イギリスでは、学問の先端であればあるほど、先生は常に覆されるという考え方があります。学生たちは頭が良くて、常に新しいことをやっているので、「先生たちより学生たちの方が優秀である」、という考え方が、名門校には結構あると思うんですね。理系も、アート系も。

RCAの先生たちはすごく優秀だったけど、学生の発言にとても真剣に耳を傾けてくれる。先生に習うというよりは、私たち学生が新しいことを作って、先生に教えてあげるくらいの気持ちです。先生は歴史を知ってて、私たち学生は「今」を知ってる。そのミックスで、新しい知識とかアートを作っていくという気持ちが、私だけじゃなくて皆にあったのが良かったと思います。

1学年16人ですが、バックグラウンドが理数系という学生は、もう1人くらいいたかな。「テクノロジー・アンド・ソサエティー」という、テクノロジーと人間の関係性みたいなことを考えるコースだったから。私にとって、理数系出身であるというのは、科学者に話を聞きに行ったりとか、サイエンスの中で面白いと思ったことを、映像や音楽でアプローチする、という形で出てきていると思います。理系出身だと、他にメディアアートやプログラミングアートをやってる方もいますが、私とはちょっと違う感じです。

MITメディアラボ、グーグルという選択肢も

RCA以外では、マサチューセッツ工科大学(MIT)のメディアラボに興味を持ってました。(新所長の)伊藤穰一さん、(副所長の)石井裕さん、両方知り合いなんです、私。石井さんは昔、私がMITで講演したときにお会いしました。伊藤さんは、私のお兄ちゃんが、私より13歳年上なんですけど、伊藤さんと一緒に起業してるんですよ。(1994年設立の)エコシスとか、(自分たちで作ったホームページ)富ヶ谷とか、日本のインターネット黎明期を、すごい小さい頃傍で見てた。小学校5年生の時に、お兄ちゃんと伊藤穰一さんが、他のアメリカンスクールの友だちとインターネットビジネスを始めた様子を見てたんですね。

伊藤さん、会いたいな。ボストン、日帰りで行けないかな。(笑)

大学では、数学とプログラミングを勉強してたので、音楽の授業で作曲の宿題が出なかったら、グーグルに就職してたかもしれません。卒業後に一度、マウンテンビューの(本社)オフィスで働くお話もありました。今もグーグルの人には仲良くしてもらっています。グーグルで働くのは、悪くないと思いますけどね。一生に一度くらい! グーグル社員のアーティストとか、面白いかもしれない。(笑)

やりたいことができる環境だったらどこでもいいんです。今は、アーティストが一番やりたいことができるので「アーティスト」ですが、面白い実験ができる環境だったら、何でもいいですね。

好きなのは、思い立ってすぐに出る旅

インターナショナルスクールに通ってたので、ロンドン、東京、ニューヨーク、どこを拠点にするかということに、あんまりこだわりはありません。カリフォルニアのパロアルトに住んでたこともあります。すごく好きなのは、気軽に旅行すること。「明日、タイ行こう」、とか。私、旅行鞄をちっちゃくするのが生きがいなんですよ。(笑) こんなに小さなスーツケースで、「これで2週間過ごせるぜ、アタシ」、みたいなのが、気持ちいいんです。

今まで旅行した中で、面白かったのはインドです。デリーに行きました。今回MoMAで展示している作品を作る前、RCAの最終学年が始まったばかりの時です。当時卒業制作でスランプに陥っていて、「何もアイディアがない」と悩んでたので、思い立ってインドに行って、インド人と一緒にサイボーグワークショップというのをやりました。

私は当時、テクノロジーのアートや哲学って、欧米やせいぜい日本の視点からしか論じられてないと感じたので、インド人はどう思ってるか、聞きたかったんです。それでインド人と一緒にサイボーグ作って、デリーをサイボーグのコスチュームでウロウロしてました。(笑) すごい楽しかったです。面白いことも聞けたし、インドではいつかプロジェクトをやりたいですね。

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ニューヨークのMoMA「Talk to Me」展は、2011年11月7日まで開催中。「レセプションは大盛況。オープニングでのトークも今回の展示キュレーターのPaola Antonelliさんに、何度も私の作品について触れて頂いて感激でした」、と語るスプツニ子!さん。「これからもニューヨーカーの感想や意見をブログやツイッターで見る事が出来たら」と、意欲満々に語ってくれました。

(取材・文/福山万里子)

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