「米NRC、メルトダウンの予想死亡者数大幅に下げる方針」 NYT紙

【ニューヨーク=福山万里子】 「アメリカの原子炉でメルトダウン(炉心溶融)事故が起きても、10マイル(約16キロ)圏内の住民が死亡する可能性はゼロに近い」、「原子炉格納容器から漏れる放射性物質セシウム137の推定量は、これまで考えられていた60%ではなく、1~2%にすぎない」 

米原子力規制委員会(NRC)が、このような研究報告書を来年4月の発表に向けて準備していることがわかった。米マサチューセッツ州に本部のある「憂慮する科学者同盟」(UCS)が入手した草案段階の資料を、ニューヨークタイムズ紙が30日、報じた。

UCSがニューヨークタイムズ紙に持ち込んだ資料は、アメリカの連邦法である情報公開法(Freedom of Information Act)に基づいて請求されたもの。それによると、NRCが過去20年間行ってきたコンピュータや工学解析の結果を統合したところ、アメリカにある原子炉が長期間電力を失うことでメルトダウンに陥り、格納容器に穴があいたとしても、放射性物質の大半は建物内にとどまると結論づけているという。NRCは、6年前からこの研究報告書作成に取り組んでいる。

NRCがメルトダウン事故を想定して分析しているのは、福島第一原発と同じ沸騰水型軽水炉(BWR)を導入しているペンシルベニア州のピーチボトム原発と、加圧水型軽水炉(PWR)のバージニア州のサリー原発の2基で、いずれもアメリカでは一般的な原子炉である。

UCSのエドウィン・ライマン博士によると、NRCのこうした事故の研究分析は、以前はパイプ損壊事故を想定していたが、今回は福島第一原発の時と同じような、バックアップまで含めたすべての電力喪失による、最終的なメルトダウンを前提として分析を行っている。どの装置から順番に停止し、温度や蒸気の圧力の変化、放射性物質の漏れがどこから何時頃漏れだすかまで、詳細にシミュレーションを行っているという。

それによると、ピーチボトム原発の場合、事故後直ちに死者が出るほどの放射性物質は漏れ出さないが、数十年にわたって付近住民ががんにより死亡する確率は高まるとしている。サリー原発に至っては、事故による放射性物質の漏れはほとんどあり得ないため、10マイル圏内の住民が死亡する確率は、1人いるかいないかとまでされている。理由は、これまで空気中に漏れる可能性が一番高いとされていたセシウム137が、コンピュータによるシミュレーションや研究室内での分析の結果、「大量に放出されるという仮説が裏付けられていないから」、という。

10マイル圏内の住民が潜在がん(死亡後、解剖されて初めてがんとわかる)にかかる確率は、以前は167人中1人だったが、今回は4348人中1人と大幅に減らしている。50マイル(約80キロ)圏内でがんで死亡する人の確率も、以前は2128人中1人としていたが、今回は6250人に1人と改めている。

しかし、UCSのライマン博士は、そもそも「10マイル圏内住民の99.5%が問題なく退避する」、「想定事故が起きる日の天候は『ふつう』」といった、事故以外の要因を甘く見すぎていると指摘。NRCはこれまでにも極端に楽観的な研究報告を行ってきたとして、条件がどうであれ、原発事故の危険性に変わりはないと強調している。

研究報告書は、NRCと米エネルギー省が管轄するサンディア国立研究所が共同で進めており、来年4月の公表までに、数回のレビューが予定されるなど、最終的な結論については今後も修正が重ねられていくという。

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